後光厳院本「竹取物語」(断簡・原題不明)
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書誌情報
・放射性炭素年代測定によれば南北朝時代(14世紀)の写。2024年現在12葉が発見されている
・伝承筆者(江戸期の鑑定)では11葉が後光厳院筆、加賀文庫蔵の1葉が二条為定筆
・本文は全体として古本系に近いが、古本系の一異本か、それとも第三の系統かは議論が分かれている
・この本文データ は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています
・ 1:個人蔵切
池田和臣(2020)「平安時代物語文学の古筆切新出資料」、『文学部紀要 言語・文学・文化』、125巻、pp.35-51、中央大学文学部、2020年3月
・ 2:高城弘一氏蔵切
上原作和・高城弘一(2003)「伝後光厳院筆『竹取物語切』―極上の逸品を発掘」、『大東文化』2003年3月号、大東文化大学広報部、2003年3月
・ 3:久曾神昇氏蔵切(1)
久曾神昇(2002)『物語古筆断簡集成』、汲古書院、2002年1月
・ 4:毘沙門堂蔵古筆手鑑『龍雄』所収切
新井信之(1944)『竹取物語の研究 本文篇』、国書出版、1944年9月
・ 5:架蔵切
岸川大航(2024)「伝後光厳天皇筆本『竹取物語』新出断簡とその本文特性」、『汲古』、85号、pp.6-10、汲古書院、2024年6月
・ 6:加賀文庫蔵古筆手鑑『古筆名葉帖』所収切
高田信敬(1984)「竹取物語断簡新出二葉―(付)延べ書き「富士山記」―」、『国文学研究資料館紀要』、10号、pp.1-20、国文学研究資料館、1984年3月
・ 7:久曾神昇氏蔵切(2)
久曾神昇(1966)「竹取物語の新出古鈔断簡の意義」、『愛知大学国文学』、8号、pp.1-5、愛知大学国文学会、1966年12月
・ 8:個人蔵切
小松茂美(1992)『古筆学大成 第二三巻 物語・物語注釈』、講談社、1992年6月
・ 9:南園文庫蔵切
高田信敬(1984)「竹取物語断簡新出二葉―(付)延べ書き「富士山記」―」、『国文学研究資料館紀要』、10号、pp.1-20、国文学研究資料館、1984年3月
・10:田中登氏蔵切(1)
田中登(1987)「竹取物語古写断簡攷」、『中古文学』、40号、pp.1-5、中古文学会、1987年11月
・11:田中登氏蔵切(2)
田中登(1990)「新出の竹取物語古写断簡」、『汲古』、16号、pp.19-21、汲古書院、1990年2月
・12:田中登氏蔵切(3)
田中登(2002)「物語系古筆切三種―竹取・源氏絵詞・大鏡の各断簡―」、『国文学 片桐洋一教授古稀記念特集』、83・84合併号、pp.130-136、関西大学国文学会、2002年1月
【更新履歴】
・2017.11/05:第1版作成
・2024.08/03:第2版作成
【凡例】
・[イ<ロ>]とある場合、イという文字がロに見せ消ちで訂されている事を示す
・[イ(ロ)]とある場合、イという文字の右にロという文字が記されている事を示す
・○\イ/とある場合、イという文字が○記号で補入されている事を示す。○記号はない場合もある
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(1)
なるひとになりぬれはかみあ
けなとさうすかしてかみあ
けさせ[て(も)]きす丁のうちよりも
いたさすいつきやしなふこの
ちこのかたちのきよらなること
世になくやの中はくらきところ
なくひかりみちたりおきな
の心地あしくくるしきとき
もこのこをみれはくるしき
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(2)
日をくらすいとおほかりをろかなる
人はようなきありきはよしな
かり (※行間)
けりとてこすなりにけりその中
に猶いひけるは色このみといは
るゝかきり五人おもひやむことなく
よるひるきけりその名ともは石
つくりのみこくらもちのみこ
[石本<右大臣>]あへのあらし大納言おほとも
のみめゆく中納言いその神のま
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(3)
めてみるうみのうゑにたゝよへは
山いとおほきにてありその山のさ
ま (※行間)
たかくうるはしこれやもとむるやま
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(4)
たりなはもしちやうしやのいゑ
らにとふらひもとめんになき物
ならはつかひにそへてかねをかへ
したてまつらんといゑりもろ
こしにかへりきけりそのゝち
もろこしふねきけりおのゝ
ふさもりまうてきて上ゝいふこと
をききてあよみとくするむま
をもとめてはしらせんむかへ
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(5)
給にいとゝ[を(本乎)]くてつくしのかたのう
みにこきいてぬいかゝしけんは
やきかせふきて[よ(本)]かいくらかりて
ふねをふきもてありくいつれの
かたと見えすふねのうみなかにまき
入ぬへくふきまはしてなみわ
ふねにうちかけつゝまき入かみわ
をちかゝるやうにひらめくかゝる
に大納言はまとゐて[文<また>]かくわひ
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(6)
しきめ見すいかゝすへきいかならむと
の給にかちとりこたへて申こゝらふ
ねにのりてありくにまたかくわひ
しきめを見すふねうみのそこに
いらすはかみおちかゝ[る<り>]ぬへしもし
さいはゐに神のたすけあらはなん
かいたうにふかれをはしぬへかんめり
うたてあるぬし[の(本)]みとんにつかふ
まつりてそゝろなるしにをすへ
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(7)
たつはとなるかみのるいにこそ
ありけれは我かいせられなんとす
るなりけりまいてたつをとらへたら
ましかはまたともなく我しなまし
よくすとらへすなりにけるかくやひ
めといふおほぬす人のやつの人
ころさむとするなりけりいゑの
あたりよりたにいまはとをらしを
のこ\と/もゝなありきそとていゑにす
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(8)
とあるをよみてきかすいとよはき
心ちにかしらもたけて人にかみを
もたせてくるしき心ちにからうし
てかきたまふ哥
かひはかくありける物をわひはて
てしぬる命をすくひやはする
とかきはつるまゝにたえ入給ぬこ
れをきゝてかくやひめすこし
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(9)
女そとまかりて見て申してことの給は
すれはふさこうけたまはりてまかれり
たけとりのいゑにかしこまりてさうし
いれてあえり女にないしのの給おほ
せことにかくやひめいときよらにを
はすなりよく見てまいるへきよしの
たまへるになむまいり\き/つるといゑはさ
らはかく申侍らんとて入ぬかくやひ
めのもとにはやこの御つかひにたいめん
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(10)
きてましてかくやひめあふへくも
あらすこくわうのおほせ\こと/そむかは
はやうころし給てよかしといふない
し返りまいりてかくやひめのみえす
なりぬることをありのまゝにそうす
御かときこしめしておほせ給きん
ちかもてはへるなるかくやひめた
てまつれかほかたちよしときこしめ
して (※行間)
おほんつかひをたひしかとみえすな
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(11)
ほきなるさはりなれは猶かなえつ
かふましきことを申さむとてまいり
て申やう仰事のかしこさにめ
のわらはをまいらせんとつかふまつれは
宮つか[ひ<ゑ>]いたしたてはたえぬへしと
申宮つこまろかうませたる子に
もあらすむかし山に見いてたる物に
侍けれはこゝろはせもよにゝす侍と
そうせさす御かときかせをはしまして
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(12)
るしいかめしくつかふまつる御かとかく
やひめをとゝめて返たまはんことあ
かすくちをしく仰しけれはた
ましゐもとゝめたる心地して返
らせ給ける御こしにたてまつりての
ちにかくやひめに
返さのみゆき物うくおもほえてそ
むきてとまるかくやひめゆへ
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